羽毛布団とは
羽毛布団とは、水鳥の羽毛を布団の中に詰め込んだ掛け布団のことです。英語では、「A down futon (ダウンフトン)」ではなく、「A down bedding (ダウンベディング)」や「A feather bedding (フェザーベディング)」のように、ベッドで使用することを前提としているようです。
羽毛の粒のことをダウンボールといます。それらは個々に分離し、生地の繊維の隙間から飛び出すことがあります。そのため、側地には特別な生地を用いています。詳しくは、このページの「生地の性質」をご覧下さい。
羽毛とは違い、羽根を詰め込んだものが羽根布団です。羽毛布団とは、まったく違った性質の粗悪な掛け布団です。羽毛布団の詐欺的な販売については、「布団の訪問販売」をご覧下さい。
羽毛の品質と産地
羽毛の品質
羽毛の品質は、一般に羽毛の粒の大きさによって決まり、大粒なほど高品質とされていますが、水鳥の種類と産地、収穫の次期によって異なります。
羽毛になる水鳥には、主に雁(グース)と鴨(ダック)がいて、基本的にはグースの方が、羽毛の粒が大粒なので、品質が良いとされます。
羽毛の産地
産地は、ヨーロッパ,中国,シベリア,カナダなど多数の寒冷な国があり、寒い地方で良質な羽毛が収穫されます。
また、季節は夏よりも冬。同じ種類の水鳥でも、小さな子供よりも、大きな大人の水鳥の方が、良い品質の羽毛が収穫されます。
大粒の羽毛が、高品質の羽毛と申しましたが、高品質の羽毛が、良い羽毛布団になるとは限りませんので、詳しくは「布団の選び方」をご覧下さい。
羽毛布団の性質
キルト
羽毛布団は、中の羽毛が片寄らないように、キルトになっていますので、独特の縞模様が見られます。
立体キルトであれば大差ない
羽毛布団のキルト方法には、各メーカー様々なものがございますが、立体キルトであれば、どれも大差ございません。値段の安いキルト方法を選んでも、問題ないと思います。
ノンスライド・キルトや、ノンスライド立体キルトの、ノンスライドとは、キルトの内部で羽毛の片寄りが起こりにくいキルト方法です。少し割高になりますが、ノンスライドを選んだら良いかと思います。
接着タイプは避けたい
キルト方法の中には、ダニ対策として、中の仕切りを、縫い合わせるのではなく、接着剤で接着するタイプのものがございます。アイデア的には良いのですが、数年で、接着面が劣化して剥がれてくるというトラブルが、相次いでいます。
生地の性質
羽毛布団では、側地の品質が、羽毛布団の性質を大きく左右するため、側地選びも重要になります。羽毛布団の生地に要求される性質は
- 羽毛が飛び出さないこと
- 羽毛が持っている性質を損なわないこと
- 丈夫であること
側地の素材は基本的に綿
側地の素材の主流は、綿です。綿の中でも、超長綿という、とても細長い綿を使っています。ちなみに、著者は、綿以外の材質の羽毛布団を見たことがございませんが、勉強不足なだけでしょうか?。
超長綿にも、ランクがあり、糸の太さを表す単位番手で、決まります。この番手が、大きな数字ほど、側地の品質が良く、値段も高価になります。一般的には、60番手や80番手です。高級なものでは140番手がございますが、肌触りがとてもしなやかです。
もう一つ、側地の品質を決める単位として、本打ち込みがございます。これは、側地1インチ四方当たりに、何本の糸を使っているかの単位で、210本打ち込みだと、1インチ四方当たりに、210本の糸を使っていることになります。この数値も、大きな数値であるほど側地の品質が良いと言えますが、羽毛布団では、300台であれば高級な生地です。
ダウンプルーフ加工
羽毛が飛び出さないためには、ナイロン袋のような側地が良いですが、それだと、羽毛の性質が損なわれてしまいます。そこで、すべての性質を満たすために、超長綿を使った極細の糸を用いて、隙間が極小になるような生地を使います。それでも羽毛は飛び出してくるので、その隙間を埋めるダウンプルーフ加工を行います。
ダウンプルーフ加工は、湿気がこもりやすくなったり、側地が擦れるとシャカシャカと音が出るとのことで、悪の根元のように言われる方も居られますが、それほど気にする必要はございません。どうしても、ダウンプルーフ加工が嫌いな人は、真綿を使った生地などでダウンプルーフ加工していないものもあるそうですので、そういったものを選べばと思います。
側地に使われる超長綿は、綿の繊維が細くて長いものほど、側地がしなやかで、肌触りが良くなり、シャカシャカ感もなくなってきます。充填された羽毛の種類が同じでも、生地の材質の違いで、羽毛布団の値段が倍ぐらい違ってくることもあります。
丸洗いできるものはポリエステル
綿100%だと、家庭の洗濯機によるダメージに弱いです。ポリエステルが多いと強度が増します。綿100%のものは、専門業者に任せた方が良いです。
ただし、ポリエステルが多いと、暖かさは同じでも、湿気がこもりやすくなる場合もあります。また、ドレープ性が悪くなることもあります。
価格の動向
羽毛の価格
近年では羽毛の需要が伸びて、輸入量が増えた為か、羽毛の値段がかなり下がってきているので、数十万円という値段の羽毛布団は、見かけなくなりました。
しかし、中国産の安価な羽毛は、生産量が低下していることや、中国の裕福層が高級な羽毛布団を使い出したこと、それに鳥インフルエンザや原油の価格上昇の影響から、値段が僅かながら上昇してきているようです。
羽毛布団の価格
化粧品業界では、よく言われていることですが、中間マージンによって、価格がかなり高価になっているということがあります。これは、羽毛布団のみならず、綿花、生地なども同様です。
最近では、インターネットや宅配が発達したことで、そういった中間マージンを無くしたダイレクト販売が、布団業界でも流行しつつあります。多層式健康パッドも、その内の一つです。生地の業界でも、生産業者や流通業者が倒産してきた理由で、生地が仕入れられなくなってきている布団屋さんも増えてきましたので、生地もダイレクト販売が中心になってくるかもしれません。
今まで、羽毛布団の業界全体が、羽毛布団の価格が下がることを恐れていたためか、羽毛布団のダイレクト販売を拒んでいました。ところが、粗雑な羽根を使った羽根布団が、ダイレクト販売に乗り出し、数点セットで1万円を切るようなものが出てきています。当然ながら、上でも述べましたが、羽毛布団と羽根布団は、比べようがないのですが、普通の人は、羽毛布団と羽根布団を、同じ物と思っている人が多いので、羽毛布団も対抗せざるを得なくなりました。
そういった背景もあり、今では、「アレルギー対策に!洗える羽毛ふとん8,800円~送料無料!」のように、羽毛布団でもダイレクト販売で、品質は同じでも、市場価格の1/4などという羽毛布団が出てきています。
羽毛の中間マージンを省けば・・・
古い業界は、問屋制度があり、中間マージンで、どうしても価格が高くなります。布団業界のみならず繊維業界も同じです。ただし、直販で出回っている生地の品質は、現段階では悪いと思います。
羽毛の流通にも問屋制度があり、布団が作れば売れる時代であれば、それで良かったのですが、今は時代が違います。流通が変われば時代が変わる。今は、インターネットと宅急便で、ダイレクト販売の時代です。
側地や布団の生産業者は、問屋を通さないと絶対に卸さないという古い体質が残っているので、結果的に自分の首を絞めているのです。「ニシキ」さんのような、新しい企業が伸びるのであれば、布団業界も活気が出てくるし、結果的に消費者のためになると思います。
手入れ方法
布団の丸洗い
羽毛布団も綿布団と同様に、布団丸洗いができます。この場合も、布団丸洗い専門業者に頼まれた方が良いでしょう。コインランドリーでのトラブルは、よく聞く話です。
リフォーム
また、質の高い羽毛を使った羽毛布団は、綿の打ち直しと同様に、仕立て直し(リフォーム)ができます。良い羽毛と悪い羽毛を振り分けて、良い羽毛を布団に戻し、減った分は新しい羽毛を充填するそうです。しかし、質の悪い羽毛を使った羽毛布団を仕立て直しすると、羽毛の量が著しく減る可能性があるので、羽毛布団を買い直した方が良い場合があります。
羽毛の仕立て直し時期の目安として、布団がペッチャンコになったり汚れたり、片寄りがおきたり、吹き出しがおきたら、仕立て直し時です。