Webサイトは効率の良い広告
プッシュ型広告とプル型広告
例えば、布団を宣伝する場合、多くの布団屋さんでは、新聞の折り込み広告を活用されていることと思います。新聞の折り込み広告は、不特定多数の人に情報を提供するために、新聞の斜め読みをするように、広告を斜め読みをする人にとっては「あぁ、布団かぁ」とすら思ってもらえないですが、潜在意識に布団のイメージを書き込むことができると思います。そして、その中のごく一部の人が、広告を見て「布団が必要だ!」と思った人が、お店に訪れたり、お問い合わせをしたりします。
このような折り込み広告の戦略は、ブランドイメージを高めるところにあります。
潜在意識にイメージを書き込むための広告は、効率の悪い広告ですが、ある瞬間に布団についてひらめくかもしれません。このような広告を、プッシュ型広告といいます。それとは違い、布団に対して興味を持っている人にターゲットを絞って、広告をしていく方法があります。このやり方は、効率のよい広告と言えますが、タイミングにもよります。こういった広告のことを、プル型広告といいます。
一般に、プッシュ型広告は、商品やサービスに興味の薄い人に対して、ブランドイメージを高めるといった長期的な広告戦略として用いられます。プル型広告は、興味のある人をすぐに集客するような短期的な広告戦略として用いられます。
広告費の削減
最近では、新聞折り込み広告は、効果が下がってきております。私のコンサル事業のお客様で、今までチラシで販売していた方に、チラシの反応を聞きました。そうすると、チラシ1万枚に対して、反応は3件程度と、私も悲しくなってしまいました。
Webサイトは、一度作ってしまうと、プロバイダ代とWebサーバー代だけなので、それほど経費がかかりません。毎日、毎日、全国レベルで、チラシの代わりに広告してくれるのです。ただし、Webサイトを、業者にお願いした場合は、契約によっては毎月の管理費や更新代がかかります。
地域密着の店が全国区へ
Webサイトでの販売方法によっては、地域のお客様のみをターゲットにしていた小さな店が、いきなり全国区のお客様をターゲットにできます。業界にもよりますが、おおよそ40%のものがインターネットで取引をされて、今後もこの数字が増えていくことを考えると、インターネット販売は無視できません。
場合によってはWebサイトでプッシュも可能
例えば、Webサイトを使って「多層式健康パッド」をアピールしたいと思います。ところが、「多層式健康パッド」というキーワードでは、だれも検索してくれません。そこで、「腰痛」というキーワードで上位ヒットするようにしておけば、腰痛について調べている人に対して、「腰痛=多層式健康パッド」というブランドイメージを作ることができます。
実際にあった事例
実際にあった、布団屋さんの事例を考察してみたいと思います。
事例1.とある布団量販店
とある中規模都市の、西川の製品を扱う布団量販店が、インターネット販売で、既製品の布団を販売しました。インターネットでの注文は、そこそこ来るようになりましたが、在庫をたくさん抱えてしまうようになりました。
流通量が増えたのに、なぜ在庫も増えてしまったか分析しますと、「これも良い製品です。こっちも良い製品です。」と、なんでも売れたら良いと思っているインターネット販売は、お客様をコントロールすることが、できないことにあります。
そして、仮に、インターネットで1個の注文があり、その品物を問屋に発注します。ところが、大きな問屋は1個の注文なんて、受け付けてくれません。結局5個発注して、1個売れると、4個が在庫になってしまいます。
この問題点を解決する方法は、なんでも売れる物は売るという考えでなく、主力製品のみを積極的にアピールする方法で解決できます。そちらの方が、お客様も迷わなくて済みます。
事例2.別のとある布団量販店
とある小規模都市の、これまた西川の製品を扱う布団量販店が、インターネット販売で、既製品の布団を販売しました。集客率を上げるために、検索エンジンに掲載される広告に応募しました。すると、広告代が月25万円もなってしまいました。
このことについて、分析したいと思います。インターネットで既製品を売る場合は、独占販売でない限り、価格競争が発生しますので、売上げの割に、純利益はかなり下がってしまいます。ましてや、広告代が月25万円ですと、尚更です。
嫁さんや、親戚を駆り出すなどして、忙しさに対応していたのですが、儲けが少いのに、忙しい仕事は、やる気がなくなってくるものです。結局、そのお店は、インターネット広告を止めました。
月25万円を、3ヶ月分程度で、SEO(検索エンジン最適化)対策をしてくれるメーカーも多いので、そちらにお願いしていたら今頃は・・・。
事例3.とある手作り布団の店
とてもマイペースなのですが、ものすごい裁縫技術を持った布団職人のお話です。インターネットで、布団のオーダーメードを販売を始めました。オーダーメードですので、お客様とのメールのやり取りが大変でしたが、全国から、こたつ布団のオーダーメードが、毎年10件程度来るようになったり、オーダーメード座布団の注文がくるようになったりしました。
通常の布団であれば、サイズは決まっているのですが、こたつはサイズが、ほとんど決まっていません。ましてや、掘りごたつは、尚更です。また、手作り布団は、とても良いものです。布団職人は、お客様の寝心地や使い勝手を考えて、布団を作ります。世界に1枚しかない、手作りこたつ布団を、気に入って下さったお客様の中には、ご近所さんや親戚に宣伝しまくる方も居て、その方からも注文が来るようになりました。
毎年、安定した売上げが上がるようになったので、電話代、プロバイダー代、携帯電話代を、インターネットでの売上げで、まかなうことができています。
その方は、今でもインターネットで、布団のオーダーメードを受け付けております。
売り上げアップを目指すためには
価格競争とサービス競争
同じ店が二つ並んでいて、まったく同じものを売っていたら、必ず価格競争かサービス競争になります。価格競争やサービス競争になれば、企業の体力勝負ですので、基本的に大企業が行う戦略です。中小企業にとって、これほど疲れる商売はございません。
インターネットでは、すぐに他の店に訪れることができ、価格の比較ができます。そういったことから、他店と同じものを売っていると、生き残るためには、必ず価格競争になります。いわゆるブルーオーシャンで戦う必要があります。
価格競争を避けるには
価格競争を避けるための条件は、つぎの3つのうち、どれか1つでも当てはまることです。
- 新規性のある商品・サービス
- 独創性のある商品・サービス
- ロングテール
当然ながら、これら3つの条件に合致しても、有用性、つまりニーズがなければ売れません。新規性・独創性に関しては、新商品の開発を常にしていかなければなりません。そこで、今インターネットで注目されている戦略が、ロングテールなのです。
ロングテール
ロングテールとは、日本語で「長いシッポ」です。図をご覧ください。縦軸に、商品の売れた数。横軸に、商品を売れた順序に並べます。すると、図のように、恐竜の頭とシッポのようなグラフになります。これが、ロングテールです。左側が売れ筋商品なので、売れた数も大きいという具合です。
「パレートの法則」をご存じでしょうか。中には、「2対8の法則」や「ニッパチの法則」などとも言われています。イタリアの経済学者パレートさんが、約100年前に唱えた法則で、「2割の売れ筋商品で、8割の売り上げになる。」という法則です。
今までの販売戦略では、この2割を狙って、商品を開発してきたのですが、インターネット時代の到来で流れが変わってきました。つまり、売れない8割の商品でも、狭い地域では売れないかもしれませんが、日本全国では、確率論的に、必ず欲しいと思っている人がいます。このような考えでの商売方法が、いわゆるニッチ戦略の一つ「ロングテール戦略」です。
このロングテールを可能とした技術が、インターネットなのです。これからのインターネット販売で、効率よく売り上げを伸ばすためには、このロングテールの考えが必要になってきます。
ニッチ製品・サービスに力を注ぐ
ロングテールを行うにしても、数打てば当たるような攻撃では、在庫数が増えてしまいます。そこで、まだ誰も販売していないような、ニッチな製品やサービスにターゲットを絞り、それを強調するような販売方法が、小さな企業では売り上げが伸びる傾向にあります。
インターネットで売るのが難しいもの
インターネットでは、何でも売れるわけではございません。また、ホームページを開いても、他社では売れていても、自社サイトからは売れないこともございます。
インターネットで売ることが難しい、主なものをご紹介しておきます。
- 名前が知られていないもの
- 誰も食べたことのない食材
- 値段が高いもの
インターネットでは、名前を入れて検索をしますので、商品名や会社名が知られていないものは、検索されないので、売れることもございません。
誰も食べたことのない食材は、スーパーでも口にして初めて購入するものなので、味見ができないものは、まず売れません。ただし、有名レストランで使われているとか、有名人が勧めているなどのものは、売れることもございます。
値段が高いものには、不動産や骨董品などがございます。こういったものは、信頼性という意味で、インターネットよりも、ダイレクトコミュニケーションでの販売が中心となります。そこで、インターネットでは、展示会や展覧会のお知らせなどが有効かもしれません。
地域で布団を探している人の人数
インターネットで売れるかどうかのマーケットリサーチが重要になります。そこで、Webサイトで布団が売れるのかを、理論的に、説得力ある数字を使って、述べたいと思います。
地域の有効顧客数の試算
あなたの地域で、布団を探している人の人数は、簡単に試算できます。そのためには、まずお店の営業範囲内の人口を割り出してください。その人数をNplとします。次に、日本の人口を割り出します。日本の人口は、統計局ホームページで調べられます。日本の人口をNpaとします。
次に、日本全国で、布団を求めている人の人数を調べます。調べ方は簡単で、Googleキーワードツールを使います。ここで、「こたつ布団」に対して、地域の有効顧客数を試算したいと思います。
インターネットでこたつ布団を探している人は、検索エンジンのキーワードに「こたつ布団」と入れて検索します。Googleキーワードツールで、Googleでこたつ布団を調べられた検索数を割り出しますと、ピークの11月前後では、1ヶ月で約6万回検索されていることが分かります。
ここで、Googleの検索エンジン・シェアは、約32%ですので、日本の検索エンジン全体での検索数Nsは
Ns = 60,000 / 0.32 ≒ 188,000
ところが、検索は同じ人が数回検索します。多く見積もって、同じ人が平均2回、同じキーワードで検索するとして、実際の検索人数Nspは
Nsp = Ns / 2 = 188,000 / 2 ≒ 94,000
ということは、日本全国で約94,000名の方が、こたつ布団を探している、もしくは、こたつ布団について知りたいと考えていることになります。
次に、地域での人数を割り出したいと思います。ここで、私の住んでいる加古川市を例に取ります。加古川市全体が営業範囲だと仮定して、加古川市の人口は約268,000人ですので、Npl=268,000となります。これらの数値から、インターネットでこたつ布団を探している地域の有効顧客数Nicは
Nic = Nsp × Npl / Npa = 94,000 × 268,000 / 128,000,000 ≒ 197
つまり、加古川市ではピーク時には、1ヶ月あたり約197名の方が、インターネットでこたつ布団を探している計算となります。では、地域の有効顧客数Necは、インターネットで買い物をする人の割合を20%とすると
Nec = Nic / 0.2 = 197 / 0.2 = 985
つまり、去年の実績で11月前後のピーク月に、1ヶ月当たり約985名の方が、加古川市でこたつ布団を探していたと、試算できました。1年間では約6500名で、加古川市の1世帯当たりの人数は約2.7名を考慮すると、加古川の人口の約6.55%の人が、1年間でこたつ布団の購入を検討していることになります。また、1世帯当たりに、こたつが平均1.3個あるとすると、約12年に1度、こたつ布団を買い換える計算になります。おおよそ、妥当な数字になったでしょうか?
この試算が物語っていることは?
加古川市の中心で布団屋さんを出している方は、去年は約985名のこたつ布団を探している人が居たということです。そして、その内、何名があなたのお店にこたつ布団を買いに来ましたか?
インターネットで、こたつ布団を販売していないお店でしたら、985名の内、197名が別の布団屋さんやスーパーでこたつ布団を買うことになります。反対に、インターネットで販売をしていれば、約94,000名の方が、こたつ布団の有効な顧客となってくるのです。
今回の計算では、インターネットで買い物をする人の割合は、たまたま20%で計算しました。今後この割合は、100%にはならないにしても、増えていくことは間違いありません。
この数字に対応するために
こたつ布団だけで、これだけの人数のお客様になりうる人がいることが分かりました。これらすべての方が、手作り布団を選ばれるわけではございませんが、これらのお客様に対応するためには、1店舗では不可能になってきます。そこで、仕事の分担を行うようなコミュニティーが必要になってきます。
私の尊敬する父も言っていることなのですが、これからは布団屋さんの横のつながりも必要になってきます。まだアイデア段階ですが、ただいま、父と共同で、コミュニティーの準備を進めている所です。
まとめ
今のところ、インターネットで布団を販売すると、それなりに売れる店も、多いようです。手作り布団は、消滅はしないにしても、現実問題、先細りしていきますので、その打開策として、インターネットは可能性があると思います。
もし、インターネット販売を行うのであれば、広告方法をプッシュ型とプル型を連動させても良いかもしれません。二つを組み合わせることによって、広告費を大幅に下げられる可能性があります。そして、ニッチな商品・サービスに力を注ぎます。
しかし、イータネット販売の考え方を間違いますと、コストが想像以上にかかります。まずは、Webサイトの目的を、しっかりと考えなくてはなりませんので、「3.Webサイトの目的」をご覧下さい。
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